「別れに苦しむあなたへ」。
著者は「ゲイの精神科医トニー」さん。
彼との出会いはTwitterで、表示され、その方の一言ひとことが気になり、葬儀屋Youtuberさんの投稿でも紹介されていた。
今年2020年の7月に発売という弟の死に合わせたかのようなタイミングにも運命を感じて思わず購入してしまった。
死別だけでなく、失恋や離婚など別れ全般に対応しているので、死別のことだけを知りたい私にはちょっと物足りないかと思ったけれど、失恋も離婚もときには死別と同じくらいの意味をもつことがあるということだったので、どこを読んでも自分の気持ちに寄り添ってくれる。
私は弟が亡くなって以来、自分でもやめたいのだけど、弟の話、しかも同じような話をずーっとしてしまうようになった。
両親も同じ気持ちで、同じ現象なのでそれはいいとして、夫からしたらちょっと迷惑というか「うんざり」という状態だろうけれど、分かっているのだけどやめられない。
これまで自分は「意味のない話はしない・愚痴は言っても言いっぱなしにしない」タイプだった。
「じゃあ、どうしたいの?」
「今できることを探してみない?」
ずっと同じ話を繰り返す友達に痺れを切らして、心の底からその友人に同情しつつも、無理やり前を向かせてしまったこともあった。
それが今、私はその友達と同じような状態になっている。
言葉にして整理するためもあるだろうけれど、あまりに非効率だ。
悩む暇があったら手を動かせ、行動しろをモットーとしていたので、堂々巡りの話をする自分が自分でなくなってしまったような気になったけれど、このトニー先生の本を読んで気づいた。
「愚痴を言って、うじうじすることで解消するタイプの人もいる」。
私は間違いなく愚痴を言って解消する「タイプ」ではないのだけど、そうか愚痴を言っていてもいいことってあるんだな、と少し安心した。
著者先生の喪失体験ストーリーも参考になった。
彼が亡くなったと聞いた日に乗った新幹線の隣にいた見ず知らずの人にすべてぶちまけて話したい感覚とか、思わず電車に飛び込まないように柱にしがみついていた体験とか、私も同じだったから。
大切なパートナージョセフィーヌさんの死因は自死かどうかは明確にはされていなかったけれど、もしかしたらという気もした。
現在はトニー先生も新しいパートナーを見つけて新しい生活を踏み出されているそうだ。
この本の最後にあるジョセフィーヌさんへの言葉が優しくて熱く、「その通り、私も生き抜いてやろう」という気持ちになった。