誰にも内緒で母の職場に行ってきた。
母はパート採用でお手伝いしてほしい程度という話だったのに、看護師業務以外にもなぜか書類作成まで任されることが多く、休日出勤。
しかも、他のスタッフは「頑張って」「ありがとう」とは言うだけで手伝ってはくれない。
そんなことが何年も続いている。
そこにきて、ターがいなくなってしまった。
立ち直れないくらいの苦しみなのに、同僚は孫の話・家族の話がメインで、しまいには母に「もう落ち着いた?」「元気出して」という的外れな言葉をかけるばかり。
死別は人を僻みっぽく、怒りっぽくさせる。
他人に怒ったことのない母も、さすがに今回は職場の人にきつい言葉を発してしまったらしい。
もう70歳近いんだし、生活がかかっているわけでもないのだから辞めたら?
そんな人間の気持ちを理解してくれない人たちと働くだけストレスになるから辞めたら?
そう言っても、「困るのは患者さんたちだから」と、頑として辞めない。
「じゃあ、私が言いに行く!お母さんにムリな働き方させるなって言ってくる!」
何度もそう言っては母に止められる…を繰り返していて、気づいた。
「目的は文句を言うことじゃなくて、母が働きやすい環境を作ってもらうこと」!
職場で一対一で会うとなかなか優しくできなくても、「この人にも家族がいるんだよなあ」「ご家族が挨拶に来てくれたっけ」なんてその人の背景を考えたら、雑な扱いはできないもの。
では…ということで、思いついたのが「おべっか」。
文句を言いたい気持ちをこらえて、
「いつもお世話になってます~、ター母の娘ですう~」
と、手土産を持って母が休みの日に職場に行ってきた。
ものすごい鈍い人ばかりだったら職場環境は変わらないかもしれないけれど、とりあえず翌日出勤した母からはびっくりされつつも喜ばれたので、それだけでもおべっか作戦をした意味があったかな?
あとどのくらい続けるか分からないけれど、最後まで母が大好きな看護師という仕事を気持ちよく続けてもらえたらいいなと思っている。
ターがいなくなる前だったらここまでやることは無かった。
私たちは、文字通り「家族で助け合って肩を寄せ合って」生きている。