「その島のひとたちはひとの話をきかない」。
数か月前に武田鉄矢さんがラジオ番組の中で紹介していて、ずっと読みたかった本です。
精神科医の水川すいめい先生が、看護学部講師の岡檀先生のご著書「生き心地の良い町」に衝撃を受けたそうで、それで実際にご自身で日本の自殺希少地帯を歩き回ったその記録、とでもまとめればよいでしょうか。
文章が簡潔なんだけど力強さを感じて、読み物としても心地よい本でした。
こういうルポ・研究書をどれだけ読んでもターは戻ってこないし、「自殺希少地帯だからって、もし私たち家族がそこに住んでいたからって、ターが自死はしなかったかどうかはわからんな」と思いました。だって、彼には家族も友人もいたのだから。彼自身がどんどん悪い方悪い方へ考え、いつの間にか周りと距離をつくってしまっていたのだから。
自殺希少地帯だろうがなんだろうが、彼の孤独を救うことは難しかったのではないかと思うんです。
それでも、この本、まず図書館で読んで、やっぱり手元に置いておきたいと思って自分で買うほど気に入ってしまいました。
なぜか?それは、自分がこれから生きていくときに役立ちそうな言葉がたくさんあったから。そして、自殺という衝撃的な言葉は出てくるけれど、これから生まれてくる子にも読んでほしいと思い、自宅の本棚に迎えたという感じです。
助け慣れている人たちは「どうしてほしい?」じゃなくて「助けに来たよ」と断定をするとか、即時できれば24時間以内に助けるとか、タイトルの通り自殺希少地帯はわが道を行く人が多くて、まさに「人の話をきかない」とか…ターのことが起こる前に知っていたらということが各所にありました。もっとも、自死なんて遠いところにあったときにこの本を読んでいたとしても自分事としてとらえることはできなかったのだろうけれど…。
もし時間が取れたらこの本に出てくる自殺希少地帯ー徳島県旧海部町、青森県風間浦村、青森県旧平舘村、広島県旧下蒲刈町、東京都神津島村ーに行ってみたいと思ってます。できれば、子どもと一緒に。
ただの旅行になっちゃうかもしれないけれど、ターのことを考えながらそういう地帯を歩くことはターとの時間を共有することにもなると思うから。
水川先生が衝撃を受けたという岡檀先生の本には、希少地帯ベスト30が載っているらしいので、そちらも読んで、今度の参考にしたいと思います。
それにしても、こういう精神科や看護など精神医療にかかわっている方の良書を読むと、精神・心理を学ぼうとしていた高校生の自分に「そのまま進めー!」と言ってやりたくなります^^;
結局哲学科に行っちゃったけど、哲学科と精神・医療は全然別物だぞー!