村山由佳さんの「風は西から」を読みました。
ブラック企業と名高い某居酒屋チェーンの過労死をもとに、自死してしまう主人公とその婚約者、両親を軸に会社との闘いや心情を描いた作品です。
ずっと読みたいと思っていたけれど、仕事や友人にも恵まれていたけれど、交際相手がきっかけで自分でぐちゃぐちゃ考えてしまって結局死を選んでしまったターに対して、この企業に殺されたも同然の「風は西から」の主人公とはあまり共通点がないかもしれないな…と思い、ためらっていたのですが、図書館で見つけて手に取りました。
つい先日読んだ「夜がどれほど暗くても」も自死疑惑のある青年の家族のお話ではあったけれど、あちらがサスペンス主軸だったのに対し、「風は西から」の方が社会派の要素もありながら、亡くなった人の周囲の人間の心情を事細かに描写されている気がしました。
さすが、村山由佳さんです。サスペンスでもなく、スピリチュアル系に行くのでもなく、地に足の着けながら私たち自死遺族の気持ちを代弁してくれているようでした。
自分でもどう表現したらいいかというような感情を、こうやって表現し、表面化してくれた村山さんには感謝と尊敬の気持ちしかありません。
とくに結末で表現されているすべてが終わったときの婚約者への思いは、幸せな瞬間も感じられるようになった自分の心情と一致して、村山さんは分かってくれていらっしゃるなあと、励まされたような気持ちにすらなりました。
欲を言えば…村山さんに、ターのような「過労死でもなんでもないのに死んでしまった自死」についても書いていただきたいなあと思いました。
ところで、この「風は西から」というタイトルは、奥田民生さんの歌なのですね。聞いてみて、「昔CMでやってたなあ」と思い出しました。
ゆるーく前向きな歌詞と、いつものゆるーい歌い方が気持ちいいです。